「約束」涙の君を【完】
どうするって……
私が高校に行ったら、
やっぱり祥太を困らせるのかな……
パッと口から言葉が出てくるなら、
今すぐにでも聞きたいのに。
聞くことができない。
でも、抱きしめてくれているっていうことは、
嫌じゃないってことだよね……
祥太は、迷惑じゃないって言ってくれた。
私は祥太の言葉を信じたい。
胸の前の祥太の腕をぎゅっと抱きしめて、
もう一度花火を見た。
後ろから抱きしめられて、祥太と一緒に花火を見ていたら、
なんか……
生きていきたいって、
ちゃんと生きていきたいって、
思った。
人が怖くて、
未来に絶望して、
狭い部屋に閉じこもって、
ただ、死ぬことができなくて、
時間が過ぎていくだけだったから。
このままなんだって、
このままここで死んでいくんだって、
思っていたから。
だから、
こんな幸せな時間が未来にあるなんて、
思ってなかった。
おじいちゃんとおばあちゃんが、
助けてくれたから、
祥太がずっとそばにいてくれたから……
お母さん、
私は、生きていくよ。
まだ、そっちには行かないって、
お兄ちゃんに伝えて……
夜空の花火に向かって、心の中から呼びかけた時、
祥太が腕をほどいて、
自分の携帯を取った。
「もしもし……」