「約束」涙の君を【完】
庭に入ってきて、縁側に私を見つけると、
ふっと笑って下を向いて、前髪を揺らした。
そして私の前に立ったから、私は座ったまま、祥太を見上げた。
「おはよ、祥太」
私が下から顔を覗き込むと、
ははって笑って、目をそらした。
そして、大きな手のひらを私の頭にのせて、
「おはよ」って、
縁側に上がってきた。
「おはよ、じいちゃん、ばあちゃん」
居間でまだ朝ごはんを食べていたふたりに挨拶すると、
祥太は、ちゃぶ台の前に座った。
「どうした祥太、今日は早いな。
朝ごはん食ってきたか?」
おじいちゃんが祥太に聞くと、祥太は「あぁ」と、頷いた。
そして、改まって座り直して、
「じいちゃん、ばあちゃん」と、
真剣な表情になった。
「優衣と、付き合わせてください」
祥太はぐっと頭を下げた。
縁側からその様子を見ていた私は、
突然の祥太の言葉にびっくりした。
でも、嬉しかった。
ちゃんと、付き合う気持ちでいてくれたこと。
ちゃんと、ふたりに言ってくれたこと。
私もお願いしなくちゃと思って、急いで革靴を脱いで、
祥太の隣に座り、私も頭を下げた。
「えぇぇ???
なに?なんだぁ?
ばあちゃん薬くれや」
「じいちゃん、そこ薬あるだろうが。
祥太、どうした?そんな改まって。
遅刻するぞ、早く行け」
「俺、本気だから。
本気で、大事にするから。
ずっと、一生守っていくって俺……
決めたから」