「約束」涙の君を【完】
あおいは俯きながら、話し始めた。
「賢人は、他の女子にも色々声かけたりして、
あいつモテるからさ。
賢人を友達だと思ってきたから、我慢できたけど、
付き合うとなったら、私……我慢できない」
あおいはそのまま俯いていた。
「我慢していたんだ……」
私が言うと、あおいが顔を上げた。
「それは、好きってことだよ。
友達としてじゃなくて、
あおいは賢人くんが好きなんだよ」
私が真剣に言うと、あおいは目を潤ませた。
「素直になりなよ。
このままじゃ、賢人がかわいそうじゃん。
賢人が他の女子と付き合ってもいいの?」
「それは嫌だ」
即答したあおいに、杏と一緒に笑ってしまった。
「応えてやりなよ、賢人の気持ちに」
杏の言葉に、あおいはしばらく考えて、
それから「うん」と頷いた。
良かった……
「杏はどうなの?他校の彼氏は?」
あおいが言うと、へへっと杏が笑った。
「もうやばい。今回はマジ」
「え?いつもは?」
私は、杏とあおいの顔を交互に見ながら聞いた。
「あんまり、長く続かないんだよね〜いつも。
でも今回は続きそう」
杏って、そんな感じだったんだ……
それから杏の彼氏がドヤンキーだとか、杏の元彼達の話で盛り上がった。
なんか……楽しい……
こんな風に、恋バナで盛り上がったことなんてなかった。
「優衣は?祥太とはどう?」
「え?」
突然話を振られたから、びっくりしてしまった。
「あいつくそ真面目だから、超奥手っぽい。
全然ちゅーとかしてこないでしょ?」
ち、ちゅー……
思わず祥太とのキスを思い出してしまった。
祥太はキスの時、ちょっと普段と違って強引……
やばい、私、何考えてるんだろう……
「やったな」
「えっ」
「ちゅー」
「え、えっ?」
「なんだ、祥太もやるんだ、そういうこと」
杏とあおいがクスクスと笑った。
私きっと、さっきのあおい以上に顔が真っ赤になっている。
私は、麦茶をゴクゴクッと飲んだ。
「良かったね。
二人を見ていると、こっちまでなんか……
幸せな気分になるよ」
あおいが頬杖をついて言うと、「わかるわかるその気持ち」と、
杏が頷いた。
そんな……嬉しいな……
嬉しいな……
私は、なんだか泣きたくなってしまって、
涙がこぼれてきてしまった。
友達ができて良かった。
高校に行って良かった。
「ど、どうした?優衣?」
「私と、友達になってくれて、ありがとう……」
私がそう言うと、二人同時に吹き出して笑出した。
「なんだよ!びっくりしたなぁ!
こっちこそ、ありがとうだよ!」
杏が言うとあおいも、
「優衣がいい奴だからだよ」って、
私の肩をポンと叩いた。
その時、おばあちゃんが畑から帰ってきた。
「野菜洗うの手伝うよ」
杏とあおいがおばあちゃんに声をかけると、
おばあちゃんは嬉しそうに笑った。
3人で、庭に出て野菜を洗い、台所で夕飯の準備の手伝いをした。
なんか、楽しい……
そして準備が一段落したところで、祥太達が帰ってきた。