「約束」涙の君を【完】
そわそわとしながら、携帯が鳴るのを待っていたんだけど、
待ちきれなくて、
すべての部屋の雨戸が閉まっているから、
玄関から外に出た。
「さむっ」
思わず首をすぼめて、コートのポケットに手を入れ、
庭先まで走った。
すると、遠くに小さな明かりが見えて、
それがどんどんと近づいてきて、
祥太の自転車のライトだと気づいた時、
急に泣きたくなった。
こんなちょっと会えないだけで、
こんなに泣きたくなるなんて……
祥太は、ショート丈のダッフルコートにマフラーをしていて、
私の脇に自転車を止めると、
いきなりぎゅっと抱きしめてきた。
「祥太……?
どうしたの?なんかあった?」
祥太はなにも答えずに、ただ抱きしめていた。
「ごめんな……優衣……
ごめん」
祥太は何回も謝っていた。
それが何に対して謝っているのか、
突然デートをキャンセルしたことに謝っているのか、
ただ、それだけのことに謝っているだけとは、
思えないのは、
祥太の声が震えているせいだろうか……
祥太の声が震えているのは、寒さのせいなんだろうか……