「約束」涙の君を【完】
おばあちゃんの家で過ごす夏休み。
たたみの上でごろごろしていると、
蚊取り線香の煙が体にまとわりついてきたから、
うちわでパタパタとあおいだ。
すると、少しだけ風鈴の音が鳴った。
「もう、8月だなぁ」
おばあちゃんがそう言いながら居間に入ってきて、
スイカをのせたお盆をちゃぶ台に置いた。
「これ食べたら神社に行くか?」
私は、うちわを持ったまま起き上がった。
「神社?」
おばあちゃんは、スイカをシャクっと一口食べた。
「毎月、月初めには手をあわせに行っているんだ。
山の斜面にあるから、ちょっと階段がきついんだけど、
健康のためってな、毎月。
優衣(ゆい)も行くか?」
私はスイカを持って考えた。
「遠いの?その神社」
おばあちゃんは、はははっと笑った。
「すぐ裏の山だ、ほれ、そこの。
歩いて上って・・・ばあちゃんの足で30分ぐらいで、
神社につくさ。
優衣なら半分ぐらいで着くかもな。はははっ」
「そっか...じゃあ行ってみようかな...」
それから二人でゆっくりとスイカを食べ、
そして食べ終わると、
私は縁側に腰掛けて靴を履き、
おばあちゃんと一緒に裏の山の中へと、
入っていった。