受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 「俺は宇都宮まことに催眠術をかけ、お前家の真っ白な部屋にこっそり連れて行った」


(えっ!?)

俺は何故眞樹があの部屋のことを知っているのか分からず戸惑っていた。


(母が教えたのだろうか? 宇都宮まことはあの部屋に居たのか? だから俺達は一緒に落ちたのか?)

俺は隣で眠っている宇都宮まことを見つめた。
ただひたすら謝りたい。
そんな思いを込めて……


「其処に学校に仕掛けた隠しカメラの映像を流した。お前の意識は彼女を捜し、彼女の絵を描いた。そしてお前は部屋のドアを開け飛び降りた。お前は知らないと思うが、あの部屋は三階だった。運良くこの程度で済んだことを誇りに思え。全く惜しいことをしたよ。抹殺出来たのに」

眞樹は不適な笑みを俺に向けた。


「携帯で遊んでいるのがお前だと知った時、本当に天才かどうか試したくなった」


「だから美術室か?」

眞樹は頷いた。


「隠しカメラは三年生の教室。屋上。美術室に仕掛けておいた。もっとも、他の連中は殆どが教室だけのプレイだったけどな」




 俺は自ら……
彼処を選んだのか?


何がリアルゲームだ。

騙されていただけじゃないか……


俺は何て大馬鹿者なんだ。


俺はただ……

カメラの映像の中で遊ばれているだけだった……


(ごめん……本当にごめん)


俺は泣いていた。
未だに目覚めない宇都宮まことを思いながら……




 「坊ちゃま。私にはこの子が生きがいでした。だからこの子を助けてやって下さいまし」

代理母が懇願している。

(生きがい? そうかだから育ててくれたのか)

俺はこの代理母が、哀れでならなかった。

父である天才科学者を愛した為に背負わされた運命。

その大きさに押しつぶされそうになりながらも、母として守ってくれた兄弟。

俺にはこの代理母が聖母マリアのように思えていた。

俺は代理母の愛の深さに気付き、育ててもらったことを改めて感謝した。




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