意地悪な彼が指輪をくれる理由
どこかの木から葉っぱが飛んでくる。
びちゃりと腕に貼り付いて、またどこかへ飛んでいく。
カランカランカラン……。
発泡スチロールの箱が小気味良い音を立てて転がり、向こうの角に引っ掛かって落ち着いた。
履いている薄色のジーンズはもうすっかり湿っており、水気は下着にまで達している。
気持ち悪い……。
前へ進みたいのに風が強くて押し戻される。
体を傾けていないと二本の足で立ってもいられない。
さっきのコンビニでレインコートくらい買えばよかった。
そう思った時、風ではない何かの力に、思いきりぐいっと後ろへ引っ張られた。
「きゃっ……!」
背中と腕のあたりが急に温かくなる。
「お前、ほんとバカ!」
耳元で聞こえた、吐息混じりの瑛士の声。
「えっ……瑛士?」
瑛士は私が逃げたりしないよう腕をしっかりお腹に回し、荒い息を肩のところで落ち着ける。
「一緒にいたくないならと思って放置してみたけど、この風の中歩いてるお前を見たら無理だった」
「は、はぁ?」
「帰るぞ、俺んちに。辛いんだったら堪えろ。風に飛ばされて死ぬよりマシだ」
「やだ!」
「やだじゃねぇ! 言うこと聞けこの意地っ張り女が!」