意地悪な彼が指輪をくれる理由

瑛士は至極真剣な顔をしており、逆らえない雰囲気を醸し出していた。

私が怯んだ隙に、腕を掴み、歩き出す。

来た道を戻っていく。

「痛いよ!」

「黙れ。放したら逃げるだろ」

風と雨のせいで何度も立ち止まった。

だけど瑛士の手は放れなかった。

瑛士の広い背中に濡れたTシャツが貼り付いている。

ていうか、なんなの。

台風の中追ってくるとか、ドラマの見過ぎなんじゃないの。

私をどうしたいの。

強引だし。

めちゃくちゃカッコイイし。

偉そうだし。

優しいし。

ほんとムカつく。

嬉しすぎて幸せで、胸キュンで、余計に悲しくなる……。

腕を引かれ、私は再び11階建てのマンションへと足を踏み入れた。

瑛士は私を部屋に押し込め、服を着たまま浴室に引きずり込み、バッグだけ脱衣所に放った。

そしてシャワーのコックを捻る。

外の雨のように降り掛かる水。

しばらくすると温かい湯になり、服にどんどん浸みて重くなる。

瑛士が手間取りながら濡れた私の衣類を脱がし、空の浴槽へ放っていく。

数分後にはダイヤのネックレスだけになった。

瑛士も自分の服を脱ぎ、浴槽へ。

一糸纏わぬ姿になった。

「真奈美」

私を呼ぶ声がシャワー音と共に浴室にふわりと響く。

< 162 / 225 >

この作品をシェア

pagetop