意地悪な彼が指輪をくれる理由
瑛士は至極真剣な顔をしており、逆らえない雰囲気を醸し出していた。
私が怯んだ隙に、腕を掴み、歩き出す。
来た道を戻っていく。
「痛いよ!」
「黙れ。放したら逃げるだろ」
風と雨のせいで何度も立ち止まった。
だけど瑛士の手は放れなかった。
瑛士の広い背中に濡れたTシャツが貼り付いている。
ていうか、なんなの。
台風の中追ってくるとか、ドラマの見過ぎなんじゃないの。
私をどうしたいの。
強引だし。
めちゃくちゃカッコイイし。
偉そうだし。
優しいし。
ほんとムカつく。
嬉しすぎて幸せで、胸キュンで、余計に悲しくなる……。
腕を引かれ、私は再び11階建てのマンションへと足を踏み入れた。
瑛士は私を部屋に押し込め、服を着たまま浴室に引きずり込み、バッグだけ脱衣所に放った。
そしてシャワーのコックを捻る。
外の雨のように降り掛かる水。
しばらくすると温かい湯になり、服にどんどん浸みて重くなる。
瑛士が手間取りながら濡れた私の衣類を脱がし、空の浴槽へ放っていく。
数分後にはダイヤのネックレスだけになった。
瑛士も自分の服を脱ぎ、浴槽へ。
一糸纏わぬ姿になった。
「真奈美」
私を呼ぶ声がシャワー音と共に浴室にふわりと響く。