意地悪な彼が指輪をくれる理由

ももこは今日も朝から1時間かけたという巻き髪を弾ませ、楽しそうに笑う。

「あの二人、夏に真奈美さんが入院してた頃からピンク色のオーラ全開でしたよぉ」

「そんなに前から?」

見舞いに来てくれた祐子さんの様子を思い出してみる。

言われてみれば、思い当たるようなことがいくつかある。

「付き合い出したのは最近だと思うんですけどね」

「えっ? 付き合ってるの?」

「本人から聞いたわけじゃないですけど、オーラ的には」

そのオーラを感じ取ってみようと神経を研ぎすましてみるが、やっぱり私には何も見えない。

だけど、二人が好き合っていることだけは、空気から何となく感じることができる。

微笑ましいし、うらやましい。

しかし次の瞬間、私の視線は木元マネージャーの敏感なセンサーに感知されてしまった。

「倉田さん」

「は、はいっ!」

しまった、このパターンは……

「さっきからこちらを気にさているようですが、営業中は視線をお客様の方に向けてくださいと再三申し上げていますよね?」

「はい、すみません」

「お客様は目の合った販売員に引き寄せられるという話を、前回の研修でしたはずなんですけど。もう忘れてしまったのでしょうか」

「いいえ、覚えてます覚えてます」

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