意地悪な彼が指輪をくれる理由
瑛士はクスクス笑いながら、閉じていた目をうっすらと開いた。
「バカだな。お前に間違いが起きるほどの色気があると思うか?」
「何だってぇ?」
右手の握力の限り彼の顎を掴んでやると、
「冗談! 冗談だって!」
と必死にもがくのでいったん解放しておく。
「俺、この状態。気が狂ったところで何かできると思う?」
「……思わない」
現在泥酔状態。
翌朝は二日酔いほぼ確定。
だったら、まあ、大丈夫なのかもしれない。
明日は瑛士が起きる前に出て行けばいい。
「じゃあ、お世話になろうかな」
そう答えると瑛士は満足げに笑った。
二人でタクシーに乗り、瑛士の部屋へ向かう。
付き合ってもいないのに、ましてや再会して一週間ちょっとしか経過していないのに、こんな事態になるなんて。
いくら酔っているとはいえ、ドキドキする。
失恋したばかりの男女が同じ部屋で眠るなんて、普通なら間違いが起こるシチュエーション。
いや、何も起きない方が間違っているくらいだ。
タクシーに乗っている間、瑛士は私の肩にもたれて寝息を立てていた。
まったく、私の気も知らないで。
「酒くさっ」
私が笑って肩が揺れても、瑛士は目を覚まさなかった。