意地悪な彼が指輪をくれる理由

瑛士はクスクス笑いながら、閉じていた目をうっすらと開いた。

「バカだな。お前に間違いが起きるほどの色気があると思うか?」

「何だってぇ?」

右手の握力の限り彼の顎を掴んでやると、

「冗談! 冗談だって!」

と必死にもがくのでいったん解放しておく。

「俺、この状態。気が狂ったところで何かできると思う?」

「……思わない」

現在泥酔状態。

翌朝は二日酔いほぼ確定。

だったら、まあ、大丈夫なのかもしれない。

明日は瑛士が起きる前に出て行けばいい。

「じゃあ、お世話になろうかな」

そう答えると瑛士は満足げに笑った。

二人でタクシーに乗り、瑛士の部屋へ向かう。

付き合ってもいないのに、ましてや再会して一週間ちょっとしか経過していないのに、こんな事態になるなんて。

いくら酔っているとはいえ、ドキドキする。

失恋したばかりの男女が同じ部屋で眠るなんて、普通なら間違いが起こるシチュエーション。

いや、何も起きない方が間違っているくらいだ。

タクシーに乗っている間、瑛士は私の肩にもたれて寝息を立てていた。

まったく、私の気も知らないで。

「酒くさっ」

私が笑って肩が揺れても、瑛士は目を覚まさなかった。

< 32 / 225 >

この作品をシェア

pagetop