意地悪な彼が指輪をくれる理由
罪悪感に押し潰されそうだ。
息をするのも忍びない。
手はキンキンに冷えているのに、嫌な汗でびっしょりしている。
元凶は私なのだと白状すべきだろうか。
それとも、私だという証拠はどこにもないのだから、黙っておく方が良いのだろうか。
自白したら、クビになるかもしれない。
だけど心にしまっておくには容量が大きすぎる。
悩みに悩んだけれど、木元マネージャーが店舗を去るまで、私はひとつも言葉を発せなかった。
「真奈美、どうしたの? 顔色悪いじゃない」
祐子さんが私の様子に気付き、優しい言葉をかけてくれる。
心配してもらう資格なんて、私にはないのに……。
うしろめたい気持ちが胸の奥を刺激する。
「私なんです」
私の狭い心に入りきれなかった真実が、ついに口から漏れ出した。
「え?」
「元カレに指輪を売ったの、私なんです」
怖くて声まで震えてしまう。
祐子さんは今までに見たことのない、呆気にとられた顔をした。
だけど、動揺している私と違って、彼女は冷静だった。
「どういうことなの? 今、説明できる?」
「……はい……」
祐子さんは私が話し終わるまで、怒ることも笑うこともせず、ただ
「うん、うん」
と頷きながら聞いてくれていた。