意地悪な彼が指輪をくれる理由

私の失敗で一番苦しい思いをするのは祐子さんなのに、許すどころか笑って励ましてくれるなんて。

嬉しくてありがたくて、感動して涙が止まらない。

でもこれから売り場に戻るのに、お客様に泣き顔なんて見せられない。

早く泣き止まなくちゃ。

心の奥でくすぶっていた重いものがふっと軽くなった。

しかしその分罪悪感は増した。

これをモチベーションに変えなくちゃ。

迷惑をかけてしまった分、この店の、いや、このブランドのために働こう。

「あ、そうそう」

祐子さんが売り場から顔だけこちら(裏)へ出した。

「このこと、あのマネージャーには内緒にしとこうね」

そして再び笑って売り場へと戻る。

私は彼女のもとで働けたことに感謝し、彼女のような器の大きい女になろうと決意した。




< 79 / 225 >

この作品をシェア

pagetop