意地悪な彼が指輪をくれる理由
いずみと碧は、少し緩められたネットを挟んで約5メートルの距離を置いている。
ここから表情はよく見えないけれど、会話はちゃんと聞こえてきた。
「結婚をやめる話なら本気よ。今更話し合う気もない。単純に、私が嫌になったの」
「いいよ、その話は」
「え?」
「俺、別にいずみを説得したくて呼んだわけじゃないし」
「じゃあ、何?」
「思い出に浸りたかったんだ」
碧は数歩歩いてネットに触れた。
中学時代、テニス部。
男子と女子は、この4面のコートを2面ずつ使っていたっけ。
「中1の初めの頃って、俺の方が小さかったじゃん?」
「そうだね。碧、チビだったもんね」
「でも、成長期が来て、秋にいずみの身長に追いついたんだ」
「……秋?」
二人が付き合い始めたのは、中1の秋だった。
あれからもうすぐ15年。
いずみと碧は今、きっと当時の気持ちを思い出している。
私と瑛士も、当時の初々しい二人を思い浮かべた。