ふぁんたじあ!!
二章 はじまりのくに

準備体操

「ルトエ・ヴィフコス。レベル6の騎士。宜しくお願いします」
ペコリとヤギに挨拶をして、そしてムシ、カルの順番に頭を下げていく。
「わあー、ルトエさん背が大きいねー」
「大きすぎても不都合はあるものです。勇者様ぐらいがちょうどいいと思います」
「ヤギでいいよー」
「呼び捨てですか…」
「じゃあ、様、はとってよ。僕、緊張しちゃって…」
「わかりました。では、私のこともルト、とお呼びください。皆、そう呼びますので」
そう言ってルトはヤギに跪き、敬意を示した。
なかなか良く躾のできた騎士のようでヤギが頭をあげてよと頼むまで頭をあげようとはしなかった。
(おい、カル!ルトってやつはヤギにすんげえへこへこしてるけど、なんで?)
(あいつの家。ヴィフコス家の教育の一つよ。勇者は世界を救うのよ。そう教えられているの。勇者の代わりに死ぬのは自分だと、小さい時から教育をするのよ)
ルトは幼い頃から敵の気の引きや応急処置、その他諸々の旅に必要な知識を頭に叩き込むようにして教えられてきた。勇者の為に死ぬことがどんなに素晴らしいことか、勇者のそばにいられることがどれほどありがたいことなのかを。勇者を守るため、ルトは今まで生きてきた。だから、ルトにとってヤギは尊い存在であり、憧れでもあった。それが今、目の前にいる。
「勇者様。私はあなたのためならばこの命でさえ惜しくはありません。どうか、貴方のお傍に」
「ちょ、待ってよそんな、自分の事もっと大事にしてよ、ね?」
「…は、い」
ルトは自分が否定されたような気持ちになった。貴方の為ならこの命さえ惜しくはない。なのになぜそんな事を言うのだろう?

己を否定されたとしても、勇者様の…

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