もっと傷つけばいい
「なーんにも」

あたしはソウの質問に答えると、椅子から腰をあげた。

あたしが視線を向けると、彼の視線はテレビの方に向けられたままだった。

――あたしは、一体何を期待していたんだ?

ソウは映画を観ていた。

あたしに声をかけたから、あたしを見てる…と思ったあたしは、自分でもバカだと思った。

――あたしはテレビか。

心の中で自分に毒づいた後、あたしはソウの隣に腰を下ろした。

ソウの視線は、テレビの方に向けられたままだった。

――あたしは、望んでいるのだろうか?

またソウに、キスされることを。
< 37 / 140 >

この作品をシェア

pagetop