もっと傷つけばいい
「念のために聞くけど、ナギは虫歯ある?」

空っぽになったグラスにワインを注ぎながら、ソウはそんなことを聞いてきた。

「ないけど、どうして?」

あたしは聞き返した。

自慢じゃないけど、あたしは22年間の人生の中で虫歯には1度もなったことがなければ歯医者にも行ったことがない。

「なら、よかった。

もし歯の治療でもしてたら、あの白骨遺体は君じゃないってことがバレてしまうから」

「治療してたら、困るの?」

「君はこの世から“いない”ことにしたかったんだろ?」

そう言ったソウに、あたしは首を縦に振ってうなずいた。
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