もっと傷つけばいい
「――ッ、はあっ…」

ソウが唇を離した。

「――ナギ…」

ソウはあたしの名前を呼ぶと、大事なものを扱うようにあたしを抱きしめた。

彼の体温は温かくて、冷房ですっかり冷え込んでしまった躰に心地がよかった。

「――ナギ…」

「――うわっ…!?」

ソウがあたしにもたれかかったと思ったら、視界が反転した。

あたしの躰は床のうえだった。

ソウがあたしの後頭部を床にぶつけないように手で守っていた。
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