夢への道は恋の花道?
姫の心は永遠に・・・
イディアムの苦悩は続いていた。

三男のジュイムがお妃候補のマーガレットに妊娠させてしまったため、お妃選びも早急に決めなくてはならない。

予定では半年後、お妃候補の中から正式な婚約者が決定し、それから結婚式や披露宴の日取りが決まっていくはずであった。


イディアムは毎日、各お妃候補と面談する時間を取っていて、マーガレットとも毎日会話は交わしていた。

マーガレットはかわいいもの好きで、花束やぬいぐるみ、ゴスロリの服や人形にも興味があり、自身も見た目色白でかわいく見える女性だった。


それが2日前になって涙を流しながらイディアムを訪問し、事の次第を説明にきた。
ジェイムが執事のレオンを拘束してまで頻繁にマーガレットに会いに来ていたことが発覚した。

そしてレオンにそのことを上に報告するならレオンの病気の母親を国外へ追放すると脅迫していたという。


「ジュイムのやつ・・・国民にそんな仕打ちをしなくても、私に一言言ってくれていれば・・・。」


「マーガレット嬢への気持ちはどうやら本気のようですし、あまりご自分を責めないでください。

これがもし、ミチル様への仕打ちだったならジュイム様は間違いなくもう今は亡きお方になっておられるでしょうし。」


「ああ、そうだね。マーガレットの執事が君だったらあいつは重症か消えていただろう。
その方が、僕は気楽だったのにな・・・キョウ。」


「ぶっちゃけ、もうお妃はほぼ決定しているんでしょう?
消去法だとしても、もう発表なさってはいかがですか?」


「でも、できない理由があるんだ。」


「まだ、何か問題があるんですか?」


「じつは・・・お妃候補のナフィリサのことなんだよ。」


「ナフィリサ様?フランス貴族の出とかいう・・・?」


「ナフィリサは僕の幼なじみっていってもいい。
小さい頃、王様になるって現実が飲みこめなくて、王宮に入れない時期があったんだ。

そのときに、今は亡き母が郊外の古い邸に住まわせてくれて、ときどき見舞いにきてくれた。
召使いたちと暮らしていたんだが、隣の邸にナフィリサは住んでいた。

兄が2人、出張先で伝染病にかかって、療養でもどってくるけれどナフィリサに感染してはいけないということで、家を出されたらしくてね。

ナフィリサによく本を読んであげた。
うちの邸の花が好きで、花摘んだり眺めたりしていた。」



「ナフィリサ様に思い入れがあるのですね。
では、さっさと決めてしまわれれば・・・」


「できないから困ってる!」


「どうしてです?」


「ナフィリサはもう長くないんだ・・・。癌なんだよ。」


「なっ・・・。そのような状況でお妃候補って・・・。」


「僕がひとりで決めて、ここへ呼んだんだ。
お妃が正式に決まる前に彼女は旅立つことになる。

旅立つ前に僕のお妃にしてあげたかった。
どうせ、結婚は政略結婚になるのはわかっていたからね。
楽しかった思い出をくれた彼女に感謝したかった・・・。」


「なのに、ジュイム様のスキャンダル・・・なわけですか。
わけありなのは私くらいかと思っていましたが・・・イディアム様もこっそり何かと抱えておられたのですね。」


「キョウ、君はミチルとの間だけの理由だろ。
しかも、お妃候補としての書類選考のときなんか、ミチルが僕とくっついてくれれば楽ができるって言ってたよな。」


「ま、まぁ・・・。それは。」


「本物と接触した途端、君は完全に骨抜き状態になってあげくには、テニスのコーチをクビになり、僕に抗議して泣きついて・・・とても僕の憧れの先輩で、優秀なSPもしていた君と同一人物とは思えなかったよ。」


「ははっ、自分でもそういう気持ちになったのは初めてですので・・・。
ずっと他人に非情に徹してきたツケがまわってしまったのかもしれません。

体は誰かを守っても、心は誰からも触れられたくなくて、女性は女性の付き合いをすればいい程度なものでしたし、実業家としても邪魔なものは消し、自分がのし上がってきた。

私にはもう身内はいませんからね。
唯一の身内だった年の離れた弟をこの国で失って、王様に拾っていただき、あなた方ご兄弟と教育を受けさせていただいて・・・とても感謝していますから。」


「君の感謝の思いを1つだけ僕に選ばせてくれないかな。
こんなお願いはもうしないし、お妃も期限に間に合うように決めるから。

ミチルに協力してほしいんだ。
彼女ならきっとナフィリサを楽しく旅立たせてくれるかなって。
頼む!話を通してみてくれないか?」


「イディアム・・・。わかりました、話をしてみます。」
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