実は、彼女はご主人様でした。
真人の知らない桜雪に違う衝撃を受けていた。


目の前に好きだと思っている人がいる。だからこそ視線と話を交わしている今の時間は嬉しいことには違いない。


けれどなぜだろう、締め付けられる想いではなく、知っている桜雪の存在がないということがショックで衝撃を受けているようだった。



「聞いてもいい?」

「何?」

「どうして桜雪に戻ることを拒んでいたんだ?」



本来の桜雪は現実の世界に戻ることを拒否していたはずだ。

けれども、今は普通に出てきている。

桜雪が力を蓄えていたからと言うこともあるとは思うが、それにしては拒否していたことが嘘のように本来の桜雪は戻ってきている。



「拒否している想いは私ということに変わりはないよ」

「………?」
「私はね、本当に色々な私がいるの。仕方ないわよ、あんな環境下で時を重ねて来たんですもの。人格維持出来なくても不思議ではないわ」

「多重…人格…ってこと…?」

「まぁ、そうなのかしら。けど、それぞれが表に出て来た時に記憶がないってことはないよ。私からしたら、全部私なのよ。名前が違うなんてこともない」

「じゃぁ…俺が好きになった入学式の時にいた桜雪は…?」

「あれも桜雪。戻ることを拒否した桜雪よ」

「ではどうして今君はここにいるの?」

「それは今の私に言っているのね」
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