実は、彼女はご主人様でした。
第二章 力を使う理由
ある日の放課後。



「さて、そろそろやるとしよう」



桜雪の突然の言葉。
何をやろうとしているのか、何も聞いていない真人は不思議な顔をして桜雪を見た。



「ほら、真人、行くぞ」

「…え…行くって…?」

「絶望を持っている人々のもとへ、だ」

「は?」



面倒臭そうに椅子に座ったままの真人の腕を、桜雪は必死に掴み、何とか立たせようとしている。
あまりにも必死な姿に、真人は桜雪を見つめていた。



「私のことがそんなに好きなのなら、動くのだ。それから気が済むまで見続ければいい」

「えぇ…はぁ…はい」



見透かされたような言葉に、仕方なく真人は重い腰を上げた。そして一人機敏な動きで歩いて行った桜雪の後を追う。



一体何をやると言うのだろう。



絶望を持っている人たちって…その辺にたくさんいるだろうに。


生徒たちが部活に勤しむ放課後、どこにも属さない生徒が残っている確率は少ない。だが、どこかの教室ではまだ話し声が聞こえる。桜雪の足はそこへ向かっているようだった。
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