実は、彼女はご主人様でした。
第三章 鈍い心
今まで見ることがなかった状況に、真人はこっそりと桜雪と女子生徒の後を追う。


女子生徒に囲まれ、真ん中に桜雪がいる。まるで逃げ出さないようにされた体制で中庭まで器用に移動していた。


真人は会話が聞こえる程度の距離で、校舎の端に隠れた。


途端に始まる女子生徒の会話。



「ねぇ、ホント調子に乗らないでよ」

「……調子に乗るとは…何のことか分かりません」

「彼氏いるくせにさ、よく他の男に媚び売ることができるよね。ホント止めて欲しいんですけど」



言葉にすればするほど、女子生徒の怒りは込み上げていくようで、組んでいた腕を仕切りに組み直していた。



「媚びなんて売ってません。私は何もしていません」

「はぁ?この期に及んで何言ってんの?ムカつく」

「本当に私には分かりません」

「3年の広田って知ってんでしょ?そいつ私の彼氏だったわけ。なのに、アンタに告白するために私を振ったのよ。信じられないわよ、彼氏いるって分かってるのに。何なの?アンタ」



ついに女子生徒は桜雪を突き飛ばした。
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