四竜帝の大陸【赤の大陸編】

天に哂い地に吼える 3

「んん~?……導師(イマーム)って言ったぁあああ? くけけっ……あはっ……ひゅへあひゃぁああっ!!」

この支店の契約術士シャゼリズ・ゾペロの頭を掴んで左右に大きく振りながら、笑うその姿は。

「くけけけえぇえ~っ! お前等竜族もそう呼んでくれるの!? 導師(イマーム)?導師(イマーム)!?」

10才ほどの。

「導師!! そう! 私は導くのさぁああ! 愚かな人間共をっ! この世界をっ!! あひゃひゃひゃひゃっ! いいねぇ~、いいよねぇえええ!!」

 少女だった。

「……僕の質問は無視なわけ? 感じ悪いねぇ」

それは形だけであって、まともな少女などではないのは一目瞭然。
花の蕾ような可憐な唇から吐き出されるのは、醜悪な嘲笑。
浮かべた笑みは、まるで瘴気を含むかのように毒々しい。
僕等を見下ろす切れ長の眼には、あからさまな蔑み。
レースをふんだんに使った可愛らしいドレスを纏っていても、それらをとても補えない。

「ねぇバイロイト。あいつの髪と目の色を、僕に教えてくれる?」

僕の背の3倍ほどの高さに浮かぶ少女に視線を固定したまま、抱えているバイロイトに訊いた。
波打つ髪は、銀……いや、白銀だろうか?
僕がこの眼で見るものは、基本的にモノトーンになってしまう。
だから、色を感で推測しているので絶対とは言い切れない。

「色って……セレ? 貴方、まさかっ!?」

バイロイトの視線が僕の眼へと向けられるのを感じたけれど、今はそれどころじゃない。
ま、今じゃなくったって正直に教える気なんて無いけれど。

「その件は、後でね。アイツの色が、先だよ」

作り物のような、目鼻の形と位置。
左右対称の……黄金率のそれは、分かりやすい『美』の基準。
これほどの配置を持つのは、僕が見てきた中では<監視者>くらいだった。
あの<監視者>と目の前の存在の、類似点。
類似点、それは一つではなく……。

「絶対に、ですよ? ……光沢のある白髪に、琥珀……いえ、金色の目をして……います」

僕にそう伝えながらその少女をよくよく見て、バイロイトも気づいたのだろう。

「ふ~ん……やっぱり。なるほどね」
「セレ。白と金、そしてあの顔立ち……あの方と……」

 導師は、<監視者>を……<ヴェルヴァイド>の顔を幼くしたような……。

「バイロイトから見ても、似てるんだね」

導師の顔には、陛下の執務室で会った<監視者>の面影が確かにあった。

「ま……さか、あの方に……御子が?」


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