四竜帝の大陸【赤の大陸編】
第四十話
 ダルフェさんのお父さん、エルゲリストさんのお店は郊外の小さなレストランと昔から駅前にある定食屋さんが合わさったような雰囲気の、どこか懐かしくてあたたかみのある素敵なお店だった。

 エルゲリストさんが作ったという木製のテーブルには、フォークとナイフではなく箸置きとお箸……。
 家で使っていた物によく似ていて、懐かしさが込み上げた。

 もう二度と会えない家族を思い出した私の心に満ちたのは、いつものように悲しく苦しい感情ではなくて……自然と顔が綻ぶような、柔らかなものだった。
 それはきっと、このお店に……空間に満ちているあたたかな雰囲気と、ダルフェさんとエルゲリストさん親子の微笑ましい様子のおかげだと思う。


< 159 / 177 >

この作品をシェア

pagetop