四竜帝の大陸【赤の大陸編】
第四話
陽に輝く鱗は灼熱の赤。
空を飛ぶ生物の中で最大の体躯、背にはそれに見合う長大な翼。

「ダルフェ、ダルフェ。私の愛しい子」

緑の瞳は人型形態時とは違い、細い瞳孔が目玉を中央で割っていた。
この目玉が鱗同様に赤かったならば……だが、それは『ダルフェ』ではない。
『これ』は『これ』として生まれ、生き、死ぬのだ。

「お帰りなさい、ダルフェ」

子を想うブランジェーヌの、<赤>の声が。
我の中で、過ぎた刻の記憶を揺らす。

『始まり』のみを与えられ、終わりを手に入れることのできなかった我の前で生まれ、生き。
子を遺し、死んでいった竜帝達が脳の奥で揺らいで漂う。

黄泉で微睡む、逝きた四竜帝よ。
お前達が望むのは、願うのは。
子々孫々の繁栄か?
愛しき者等の幸福か?

お前等の望みを訊くのは、我ではない。
お前等の願いを叶えるのは、我ではない。

りこ。
我のりこ。
あの女、なのだ。

我のりこに、我の女神に。
我の愛しい女に。
頭を垂れ跪き、乞うがいい。






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