四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「ハクちゃっ……」
「りこ」

 疑問を口にする前に。

「これは善意から行動したのではないのだ」

 後頭部に大きな手が添えられて。

「祖父を奪った者に、さらに奪われるのを拒み。祖父を殺した者を殴り返す事すら出来ぬ程弱い自覚があるゆえ、もっとも簡単で単純な方法を選択したにすぎない」

 彼の肩へと寄せられた。

「りこを武器のように利用しようとしたのだ。それでもこれに助けられたと言うのか? そう思うのか?」

 ハクは、私に訊く。

「思うことができるのか?」

 ハクが、私に問う。

「……彼が、シャデル君がいなかったら、私は売られてたの。彼のおかげで、貴方を呼べた……」

 私は、あの時に見たシャデル君の手を思い出す。
 彼の手は、指は。
 輪止の金具で傷つき、血を流していた。

「感謝してる。とても、とても……」
「……感謝?」

 ハクの大きな手が、私の後頭部を撫でて……。

「そうか……ならば」


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