四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「ちょ、待て、カイユ! ……父さんが張り切って仕込みしてるだろうから、夕飯に間に合うように帰らなきゃなんだ。遊んでる暇ないっつーの!! それに術式がきれて寝てた奴等も目覚めはじめてる。見つかるとめんどーだから帰ろう!」

 俺に背を向けてすたすたと目的のモノに向かって歩き出したカイユの胴を。

「きゃっ!? ちょっと、待ちなさっ……」

竜体に変化した俺は4本指で手早く掴み、空へと飛び上がった。
爪で傷つけないよう両手で包みむように持ち直し、気流にのろうと上昇した俺に。

「ダルフェ……ダルフェ、戻って!……あの方が“ありがとうございました”なんて言って驚かせてくれたから、千切った腕に巻かれていたヴェルヴァイド様のかけら、置いて来てしまったの! 捨てろと仰ったけれど、放置なんてできないわっ! 回収して赤の陛下に“処理”をお願いしましょう!」

手の中のカイユが、風音に負けないように大声で言い。
俺はうなずき、引き返すべく翼の向きを変えた。

目覚め、天幕から出てきた人間達が舞い降りた俺の姿に驚愕と恐怖のためか声を失い、立ちつくす。
動きを止めた人間達を一瞥することもなく、カイユは目的のモノへと駆けた。

「…………ダルフェ」

地上を離れてたのは。
短時間……2、3分程度だった。

でも。

「……なぜ?」

カイユによってもがれた腕は。
旦那のかけらを巻いた、あの腕が。

「なぜ、無いのっ!?」

無価値の塵同然に、地面に転がってたはずのそれが。
消えていた。







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