黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

歩道に点在する街灯を頼りに、俺は自転車を押しながら歩いている。

強い想い。
死んでもなお残る、この世への想い。怨念チックでもっと残酷な、覗いてはいけない世界だと思っていた。
でも現実は少し違った。

悪霊と呼ばれているだけで、実際はそんなに悪いものではないのではなかろうか?


もう誰もいなくなった交差点で自転車を停め、ポケットからスマートフォンを引っ張り出して画面滑る。

「もしもし和泉だけど」
「ああ、雅治。終わったの?」
電話の向こう側から、テレビの声が聞こえる。どうやら既に、寛ぎモードらしい。俺は今日の出来事を、事細かく説明する。

「なるほどね、お疲れ様」
「いや、瑠衣のお蔭だよ」
「でもね──」瑠衣の口調が変わる。
「今回はたまたま、本当に運が良かっただけ。悪霊は悪意の塊なの。だから1人で突っ走らないで、行く前に連絡してくるのよ」
「心配してくれるのか?」
「バッ・・・バッカじゃないの!!
そんな訳ないじゃん!!
私はただ、えーっと、まあいいわ。じゃあね!!」

電話は一方的に切れた。
心配してくれる事に問題は無いと思うが。ああいうのを、ツンデレと言うのだろう。


俺は自転車に乗り、自宅への道のりを進んだ。

 




 




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