好きになった人、愛した人。
負けじと言い返す。


あたしはあの時、矢原の言葉に首を縦に振った覚えはない。


給料だって、つき返した。


だから、ここへ来ることに文句を言われる筋合いはない。


「奈生、そいつから離れろ」


あたしの手を握っている奈生に、矢原は言った。


しかし奈生は……「嫌だね」あたしにだけ見せる裏の顔を、矢原に見せたのだ。


矢原は驚いたように口をポカンと空けて奈生を見る。

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