好きになった人、愛した人。
家族のみんなに迷惑をかけているから、聞き分けのいい弟を演じていた奈生。


その奈生が矢原の言葉を一言であしらってしまったのだ。


それは、当然の反応だった。


「なに、言ってる?」


矢原の声が震えた。


「嫌だって言ったんだよ。俺はこいつを離さない。たとえ、兄貴に頼まれても、絶対に無理だ」


そう言いきる奈生に、矢原は脱力するようにその場にひざをついた。


「なんだよ……今までそんなわがまま言ってなかったじゃないか」

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