不機嫌な果実
・・・しばらくその場から動けなかった。

でも、もう、教室に戻らないと。

・・・

私は、落ち着かないのを無理して落ち着かせる

フリをして、

自分の教室に入っていった。


「桃子、どうしたんだよその顔?」

私のまだ少し腫れた頬、

そこに残る傷に驚きながら、恭治が問いかけてきた。


「…ちょっと、事故」

「何だよ、事故って?」

「…事故は、事故よ」

そうごまかすしか他になかった。

・・・

昼休み。

ご飯を食べ終わった恭治が、

私はまだ終わっていないのに、

教室を連れ出した。


「痛いよ、恭治」

「いいからちょっとだけ、付き合え」

「恭治ってば」

・・・

連れてこられたのは、

サッカー部の部室。

昼休みは誰も来ない。

というより、部長の恭治以外、

鍵を持ってないから入れない。
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