不機嫌な果実
「美容師になったら、私の髪切ってよね」

「…一人前になったらな」


高校卒業したら、美容学校行くんだってね、

雅が言ってた。


「お互い、夢の為に頑張ろうね」

「お前は、保育士だったっけ?」

「うん、・・・って言うか、どこで聞いたの?!」

自分の夢は、雅と担任しか知らない。

両親にすら、まだ話してないって言うのに。


「その雅って奴から聞いた」

「・・・え…雅と仲がいいんだね」

雅のお喋りめ。

私は憎まれ口を叩いた。


「バカ言え!自分は先輩だとかほざきやがって。

教室に来ては、桃子の事をベラベラ、ベラベラ・・・

桃子を幸せに出来るのは、アンタしかいないとか言い出すし」


ブツブツと、文句を言い続けている。

雅の事だ、ずっと凌也にまとわりついて、私の事を言ってんだろう。

友達思いの雅。そこが好きなんだけど・・・。

凌也は、疲れただろうな。

私はクスクスと笑った。

「笑い事じゃねえよ」
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