視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~


「それから、香歩さん。ここからが本題なんたが…。もしかしたら、君にも事情聴取がされるかもしれないんだ。香里奈さんの報告書と、図書館での殺人事件で君の名前が出てしまったから…申し訳ない。」


「それは…仕方無いと思います。…長田さんに比べたら大した事ありません。」


「斉藤は捜査の段階で、監督対象行為に反して、君を図書館での殺人犯と面識があるんだと、君に不安にさせてしまった。だから、その件については上に報告済みだ。だから、多少考慮されるかもしれない。私が出来るのは、その位しかなかった…。すまない。」


「監督対象行為?」


「捜査するに当たっての決まりみたいな物だよ。その中のひとつに、”不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること。”がある。斉藤は、それに当たる。」


「そうですか…。でも、それじゃあ斉藤さんに申し訳ないです…。」


長田さんは、曖昧に笑いながら、
『事実は事実だから、君が気に病む事ではないんだよ。』
と、私を安心させようと話してくれたんだ。


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