スティール
「兄さん?」
ドアの前でオレを待ち構えていたのは、オレの実の弟である「長谷部元也」だった
100人に「この人は怒っていますか?」というアンケートを取るなら、全員が「はい」の答えが出るだろうというほど、明らかに怒っている
そして、その理由はもう明らかだ


「兄さん、僕が誘ったサッカー部・・・辞めたんだって?僕なにも聞いてなかったから、今さっき監督の飯島先生から聞かされた時はすごくビックリしたよ」

皮肉混じりの実の弟は、実の兄を今まさにクラスメイトの前で恥をさらしている

実の弟、元也は、この高校では「正義のヒーロー」というあだ名で定着している
風紀員でもないのに、風紀員より学校の風紀を守っているのだが、あだ名の由来はそこではない
まだ元也が一年生の時に、当時3年の先輩率いる不良グループの悪行から毎日毎日他の生徒達を守っていたからだ


喧嘩も弱くは無いがそんなに強くない
スポーツが出来る訳でもない
成績は並み以下


ただ、「正義の心(笑)」とやらが誰より強いのだ



「聞いてるの?兄さん?」

「3割くらいはな」

正義のヒーローであり、実の弟である元也は大きなため息を出す
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