「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
前の職場もそういうのが原因で辞めざるを得ない状況に陥ったんじゃないか。

そんなことを勝手に想像してみる。



このままだとここでも、また近いうちに居づらくなるんじゃないだろうか。

そうなったら可哀想だと思った。



ただそれだけだった……はず……。






そして数ヶ月が過ぎ、彼女も『一応』、ここの職場、そして職員たちに馴染んできた。



昼食の時間、俺と彼女はたまたま向かい合って座り、それぞれ入居者さんの食事介助をしていた。


薬師丸が介助していた広川アキさんが、俺の顔をじぃっと見詰め、その後、薬師丸の方に顔を向け、声を潜めて言った。

「あのお兄さん、優しいけど――

――顔がちょっとね」



聞こえてますけど。丸聞こえですけど。


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