「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」




真一文字のキスを一方的に済ませて、はぁーっと。仕事上がりの一杯を飲み干したオッサンみたいに大きく息を吐き出し、ニッと満足気に微笑んだ杏奈。



「ねぇ浩平(こうへい)……」


「何だよ?」


「シよ?」


ねだるようなトロンとした瞳の中に、獲物を狙う獰猛さがチラつく。それが妙な妖艶さを醸し出して、俺の意識が本能的欲望に呑み込まれ、正常に機能しなくなるから困る。



だがしかし、今日は2月14日。

男にとって、それは特別な日。


俺としては、どうしても最愛の彼女に頂きたい物がある訳だ。



「やだね」

自分の中の欲望を押し殺して、俺のうなじに絡みついている二本の腕を、両手で掴んで無理矢理剥がした。


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