「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
だけども肘掛けに乗せた俺の腕に、そろりと杏奈の手が伸びて来て。

指を絡め取ってくるもんだから、そんな不満はたちまち夜の闇に溶けて消えた。



「ほんとはね、」

急にいつもの明るい声色で口を開いた杏奈。そして――



「浩平となら、どこでもいいんだ」

言って、肩を窄め照れ臭そうに笑う。


可愛いなチクショー。



「いちいち言うなって。そんなのわかってっし」

なんだかこっちまで照れ臭くなってきて、思わず素っ気なく返してしまい、即、後悔。



丁度その時、赤信号に引っ掛かって、ブレーキを踏んだ。


隣の杏奈に視線をやれば、どこか不安げな表情で俺をじっと見詰めていた。



「俺もだから」

言うなり杏奈の肩に腕を回してグイと引き寄せる。



そうして重ねた唇はいつもより冷たくて。だけどすぐ、二人分の温もりを分かち合って熱を帯びた。



二人の間に隙間をつくれば、たちまち冷えていく唇に深い溜息がこぼれた。


「こう……へい?」

心配そうに小首を傾げる杏奈に、胸がきゅっと締め付けられる。



「杏奈のこと――

好き過ぎて苦しい……」


囁くように伝えたら、杏奈は顔をくしゃっとさせて微笑んだ。



「偶然だね、私もだよ?」




[コンドーさんを求めて]Fin.




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