「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「杏奈……」

無意識に愛しい名を呼んでいた。


見詰めていたら、ぷっくらした可愛らしい唇に食らいつきたくなった。ゆっくり覗き込むようにして、杏奈の顔に俺のそれを近づける。



「あーもう、いいわ、いい。お腹いっぱい。もう結構です」

城之内の声に、ハッと我に返る。



「ああお前、まだいたの?」


すっかり二人の世界にはまり込んでた。あっぶね。



「それ、どういう意味よ?」


「そのまんまの意味よ」

城之内の語尾を真似て、冗談交じりに本音を返す。



「アホくさ。バカップル過ぎて、付き合ってらんねぇ」


「誰もお前に付き合ってくれなんて言ってねぇよな? むしろ俺は『来るな』と言ったはず」


「帰るわ。水族館、行ってらっしゃーい」


既に俺たちに背を向けた、やっぱり会話の成立しない城之内は、肘を折ったまま右腕を上げて、気怠そうに手を振った。


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