「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「何なの? あの人……感じ悪い」

城之内の4WDが去ってから、杏奈が不満げに漏らした。


いつの間にそうなったのか良くわからないけど、俺は杏奈を大事そうに抱き締めていた。

腕の中から俺を見上げる杏奈が、愛し過ぎて理性が飛びそうになったのは言うまでもない。


今すぐにでも、その全てを奪い尽くしたい衝動にかられる。

が、杏奈は今日の水族館デートをもの凄く楽しみにしていたので、軽いフレンチキスで我慢した。



「ああ見えてアイツ、俺のこと大好きだからね?」


「そうなの? そんな風には全然見えなかったけど……」


「アイツ……お前の気持ちを確かめに来たんだ。相当、暇人だろ?」


「どういうこと?」


「ま、そういうこと」


わざと曖昧に返して、含み笑いを思わず漏らす。


杏奈はそんな俺を、プクッと膨れて上目使いで睨みつけたけど、すぐにいつもの可憐な笑顔を見せた。






最後に。

この水族館デートの後、本日の主役『極薄』の出番はちゃんとあったということを、ここに記しておく。


追伸。

そして、出番は一度ではなく複数だったことも、ついでに記しておく。




[残念なイケメン]Fin.




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