「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
ようやく薄く目を開けた浩平が、

「杏奈……今何時?」

ボソボソと掠れた声で問う。

「11時半」

壁掛け時計に目をやり教えてあげれば、

「やばっ、遅刻!」

浩平はもの凄い勢いで起き上がった。


「何言ってんの? 夜の11時半だよ?」

「ん?」

小首を傾げて私を見詰めたままフリーズ。寝惚けてんのか……。


「ああ……湯張るの待ってる間に寝てた」

思い出したように言って、ばつが悪そうに苦笑した。


「追い炊きしてくるから、お風呂ぐらい入れば?」

冷ややかに言い放ち、踵を返して浴室へ向かう。そうして追い炊きスイッチを押して再びリビングへと戻れば、浩平はまたソファーに横たわり寝息まで立てている。

プゥー。

屁までこきやがった。


「浩平! 浩平ってば!」

すぐさま歩み寄って、その大きな図体をわっさわっさ揺すってみたけど、

「もう少し寝かせて……」

うわ言のようにぼそぼそ呟いて寝返りをうった。私には浩平の後頭部しか見えなくなる。


もう知らん。本当にもう知らん。呆れすぎて言葉も出ない。

あまりの怒りに腹圧がかかったのか、急激に尿意を覚えてトイレへ向かう。アルコールが入ると近くなるよね、なんてどうでもいいことを考えながら便器に座れば――

ずぶっ、

お尻が便器の奥深くまですっぽりはまった。

弾かれたように立ち上がって振り返ると、便座が上がったままになっている。


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