「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「何これ! トラップじゃん! こんなのトラップじゃん!」

平和な家庭に潜む巧妙な罠。油断しきっていました。迂闊でした。


それでも生理的欲求には逆らえず、便座を下ろして出すもの出して、僅かながらの解放感を得てトイレから出てきたらば、

「夜遅くに何騒いでんの? 近所迷惑だろ?」

相変わらず後頭部しか見えない浩平が、声だけで私を責める。

ふっざけんな!

私がつい、夜遅くに騒いじゃったのは、一体誰のせいよ?

身体の芯がムカムカモヤモヤ燻って、どうにも抑えきれない。たまらず鞄を乱暴に掴み上げて玄関を出た。



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