「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
ここは5階、認知症フロア。


もうね、毎日が同じことの繰り返し。

入所者さんが発する言葉も、同じことの繰り返し。



米山イジリが私の唯一の楽しみなんです、ごめんなさい。




昼食タイムはデイルームで食事介助。


誤嚥防止のためにとろみを付けたお茶を、スプーンですくって隣の順麗子(じゅんれいこ)さんの口元へ持っていく。

こんなゼリーみたいなお茶じゃ、飲んだ気しないよねー、などと思いつつ……。



向い合せに座っている一徳(いっとく)さんは物静かなお爺ちゃんだ。右半身重度麻痺のため、その隣には米山が腰掛けて介助していた。


窓に囲まれたこの場所は眺めがいい。けれど、その景色に視線をやれば、嫌でも米山が視界に入って来る。



鼻はデカいのに目は小さい。黒目がちなそれは、しかしながらクッキリ二重。

こんなにも無駄な二重瞼に出会ったのは、生まれて初めてだった。


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