淡い初恋
「へぇ、そう。」と彼の素っ気ない声が聞こえた。私も思わず「千堂くんは!?」と聞いてみた。「俺?」と聞き返され、すぐに彼は「いる。」と応えた。

ガーン!いるんだ。もしかして早坂玲奈さん?かもしれない。私は、内心ショックを受けて思わず「だよね。でも、千堂くん素敵だから想われてる子が羨ましい。」と本音をつぶやいてしまった。

俯き加減で少し視線をずらすと彼の手首の袖口ボタンが取れかかってるのが目に入った。「あの!ボタン取れかかってる!」と言葉を発すると彼は「え?」と言って、私の視線の先と同じ方を見た。「やべ、どうしよう。」と彼が言ったので私は思わず「私、裁縫道具持ってるので縫うね!!!」と言っちゃった。

やばい、図々しいかなと思い恐る恐る彼の方を見上げると「助かる。」と言って彼が微笑んだ。ズッキューーーン!!と来た。なんて無邪気で可愛い笑顔をするんだろう。私は、動揺を隠しながら鞄から裁縫道具を取り出すと針に糸を通し始めた。「じゃぁ、失礼します!」と言うと「お、おう。」と彼が反応したので私は彼の手首に触れた。

わざとらしいってバレてないかな?彼の肌に触れてみたくて、ちょっと我ながら無意味に彼の手首を掴んだりしたりして。意外にも太くて重い、やっぱ男だしバスケやってたからがっしりしてるんだなぁと思った。私の心音が聞こえてたりしないかな?指が震えてるとかバレてないかな。凄く緊張して体中が熱を帯びてるみたいだ。

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