淡い初恋
私は、「出来た!」と言って針と糸を片した。「不器用だけど・・・・。」と言うと彼が「そんなことないよ。ありがとう。」と言ってくれたので私は嬉しくて「いえいえ。」とはにかんだ。


するとその時だった。一体何が起きたのか理解できなかった。突然、千堂くんの顔が近づいてきたかと思うと、彼は、私の後頭部を掴み、いきなりキスをしてきた!!

「!?!!」か、か、顔が、千堂くんの顔がこんな近く・・・、まぶただ。彼のまぶたがこんな近くに!!え、え、え、!!?


唇が離れると至近距離から顔を見られて、ドクンと心臓が大きく跳ね上がり、急に体が震え始めた。突然の出来事に体と心がパニックを起こしたみたいだった。彼は、申し訳なさそうに謝ると席を立とうとしたので私は思わず「千堂くん!!」と言って彼の手を掴んだ。


彼がびっくりして振り返ったので私は慌てて俺の手を離した。「え、あの、その。」と私はどうしていいか、分からずまごまごしていた。だって、これは衝動だった。このまま千堂くんに行かれてしまっては、寂しいと思ってつい彼の手を掴んでしまった。

「何?」と言って彼が距離を詰めてくる。私は、勇気を振り絞って、「私、嬉しくて・・・。」と応えた。「え?」と聞き返されたので、もう当たって砕けろだと思い「私、千堂くんのことが好きだから、さっきのキス嬉しかったの。」と応えた。

「え!?」すごく驚いた彼の顔を見て、私はダメかもと思い「ごめん、迷惑だよね・・・。」と言うと彼は急に私を抱きしめた。「え?千堂くん?」今度は何が起きたの!?と思っていると「俺も・・・だ。」と彼が言ってきた。

「え?何?」何を言われたのか一瞬分からないでいると「俺も高梨さんが好きだ。ってか、両思いか!マジで嬉しい!!」と言い、更に抱擁を強めてきた。

「え?本当に!?」私はビックリして涙を流した。
「信じらんない、だって千堂くんが私なんかを・・・。てっきり、早坂さんが想い人かと思ったのに。」と言うと「え?早坂?マジありえん。」と彼が猿みたいな不細工な顔で言ってきたので思わず吹き出した。

まさか、両思いだったなんて嘘みたい。いつから私のこと好きだったんだろう。全然気づかなかった!でも嬉しい!私と同じだったなんて。

「これから宜しくな」と千堂くんが私を見下ろしながら言ってきたので「私こそ宜しくね。」と笑顔で応えた。


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