淡い初恋
「希ってさぁ。」「え!?」顔を上げると、彼が顎を手の平の上に載せた状態で「まだ、俺のこと好きなの?」と不敵な笑みで聞いてきた。

「え?」一瞬心臓がドクンと飛び跳ねた。けど、私は、「うん」と応えると彼を上目遣いで見た。龍くんは、フッと笑うと「じゃぁ、寄り戻す?」と聞いてきた。なんで、さっきから私に尋ねるんだろう。そう、思ったけどコクンと頷くと「じゃぁ、とりあえず行くか。」と言ってきた。

「え!?どこに?」と聞くと「希の家。」と言ってきた。

店を出て、私達は京葉線沿いにある最寄り駅で降りると私が住むアパートに向かった。龍くんは、私の隣を歩いているけど高校時代の時のように手を繋いできてくれない。寄りを戻したのに、やっと想いが届いたのに彼はどこか余所余所しかった。

『近いうちに再会出来ますよ。』
『しかも、両思いです。再び縁が結ばれるでしょう。』

私は、先日会った占い師の言葉を信じて、このなんとも言えない違和感や不安を拭い去るように「きっと大丈夫」と自分の心に言い聞かせた。
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