淡い初恋

転機

そんなある土曜日の昼、近くのショッピングモールに出かけた時のこと。レディースショップを転々としていると行き交う人がみんなチラッと横目で見たり、振り返って何かを見てる光景が目に入った。なんだろうと思い、辺りを見渡すとその場の雰囲気から浮き出てイケメンオーラを放った長身の男を発見した。「千堂君、ここで何してるの?」キョトンした顔で声をかけると千堂くんは「彼女の誕生日プレゼントを買いに来た。」と言って歩き始めた。

「え?もしかして高梨希?」と思わず笑顔が引きつった。「ああ、やっとバイト代貰えたからな」と言いつつ、彼が距離を置こうとするのでしきりに後を追いかけた。

完全に私を撒こうとしてる?でも負けないんだから。そう思っていると、一瞬高梨希に似てる人が目に入った。まさか・・・。また横目で見ると向こうは私たちの存在に気づいていないようだった。じゃぁ、もしかして偶然ここに・・・?。私は名案が思いつくと「じゃあ、私が選んであげようか?」と言った。

「は?なんで?」と彼が言うと私は「だって・・・」と言って、彼女を見た。目が合った。私は、チャンスだと思うと「こうゆうのは男じゃなくて女が選んだ方が好みとか分かるでしょ?」と言った。彼は少し思案した後、「そうかもな。どこに行けば良い?」と聞いてきたので「こっち」と言って彼の腕にしがみついた。「おい!」私は高梨希をもう一度見ると彼女に見せつけるように「ねぇ、こっちだよ」と言ってそのまま彼の腕を引っ張った。


香水売り場に着き、彼もこのままの状態が嫌じゃないのだと思い、彼の逞しい腕に頬をすり寄せたら、彼は腕をおもいっきり振り払った。「ありがとう。もう、いいから」と言って、中に入ろうとするので「何よ!そんなに拒絶しなくたって良いじゃない!」と私は怒鳴った。「私だって千堂君のことが・・・」千堂くんのことが好きなのに・・・。そう言おうとしたら「悪いけどマジでかまってる暇ないから。じゃ、案内ありがとう。」と言うと彼は香水を手に取って完全に遮断した。私は、唇を噛み踵を返すと「絶対このままで引き下がらないんだから」と捨て台詞を吐き、その場を後にした。

卑怯な真似だとは思ったけど、私にはこの方法しか思いつかなかった。私は高梨希を牽制した。あの子の方から、勘違いして彼から離れてくれれば、千堂くんも諦めるだろう。私は、二人が別れるのを心待ちにした。
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