オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
だけど。


「マ、マコ……?」

「あたし今、夢を見ているのかもしれない。ごめん葉司、また出直してくるね!」

「ちょっ、マコっ!!」


まだ葉司に女装癖があるなんて認めたくない気持ちが勝って、今度は“これは夢なんだ!”と自分に逃げることにしたあたし。

引き止めようとする葉司をかわし、部屋を出て駅まで走って、自分が降りる駅に着いたら、そこからまた走って部屋まで帰った。


自分の部屋に入ると、とたんに気が抜けて、へなへなと玄関にへたり込んでしまう。

まだ整わない呼吸に、じんわりと額に滲む汗。


「はぁ、はぁ。で、でも、寝ないと……!」


現実逃避をするには寝るのが一番。

……だと思う。

さっと汗を流して着替えると、そのまま何も考えずにベッドに入って羊を数えた。

幸いなことに、寝ることだけは人より得意で、あまりクヨクヨ悩まないタチのあたしは、30匹羊を数えたところまでで記憶がない。


そうだ、これは葉司のドッキリだ!

真剣な顔も何もかも、みんな演技だったんだ!

この期に及んで、あたしはまだ葉司の女装の理由を探し、そう思い込むことに全力を注いだ。





 
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