オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
となると……。
「うーん。ほかにどんな理由があるかな」
学園祭のためでもなければ、知り合いのためでもないとなれば、女装をする理由になりそうなことを思いつくのは、なかなか難しい。
ワインの酔いも吹っ飛ぶ勢いの衝撃を受けたわけだけれど、それでもまだ若干は残っているから、ひらめき指数がちょっと足りないのだ。
「マコ、お願い。ちゃんと聞いて」
「……」
すると、そう言って、あたしの前にふわりと座った葉司は、そっとあたしの両手を取り、自分の両手で包み込むようにして握ると、それをゆっくりと胸の前に持っていく。
その一連の動きに言葉が出ないでいると、葉司はわずかに声を震わせながら続けてこう言う。
「マコのことは大好きだよ。それはずっと変わらない。だからこそ、俺のことをちゃんと知ってほしいと思ってる。……ねえ、マコ」
「……」
名前を呼ばれて、思わず顔を上げる。
葉司は真剣な目をして、けれど潤んだ瞳を不安げに揺らし、あたしをじっと見ていた。
葉司がこんなにも真剣に向き合おうとしてくれているのに、あたしだけいつまでも逃げているわけにはいかないのかもしれない。
あたしだって葉司が好き。
その気持ちは変わっていないんだもの。