オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
今までは真剣に考えたことはなかったけれど、女装をしたり、女の子らしく振る舞ったりする男の子のことを“オトコの娘”と表記するようになったり、呼ぶようになったり。

加えて、カフェやDVD、CDなどの商業としての需要が高まるくらいに“オトコの娘”が一般化するまでは、メルさんはきっと、心無い目や言葉に晒されながら生きてきたはずなのだ。

メルさんの、分け隔てなくみんなに優しい、まるで聖母を思わせるような部分には、あたしなどでは察してあまりあるほど苦悩や葛藤や、辛いこと、納得いかないこと、その他、たくさんのご苦労があったことだろう。


あたしはずっと、メルさんのことを、自分の道を貫いていて超カッケー!! なんて思っていたのだけれど、そんなに軽いわけはないのだ。

メルさんの優しさの裏にある、それらの苦しみの片鱗を、あたしはようやく知った気がした。


「……まことちゃん? どうしたの?」

「え?」

「そんなにびっくりしないでよ。急に黙っちゃったのよ、あなた。え、あたし、何か変なことでも言ってしまったのかしら」


メルさんに名前を呼ばれ、ハッと現実に戻る。

それまでの思考の渦からいったん離脱をしたあたしは、本気顔で首をかしげているメルさんに曖昧に笑顔を作り、ううんと首を振った。
 
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