オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
けれど、店を出ようとしたところで聞き捨てならない台詞で竹山に呼び止められ、あたしたちは同時に振り向き、それぞれに突っかかる。

あたしがちんくしゃなのは、一万歩譲って、まあいい、と聞き捨ててやらないこともない。

ただ、奈々は可愛い。

本当に可愛いのだ。

あたしと一緒にいるがために、ひとくくりで“ちんくしゃ”と呼ばれてしまうのは、すごく申し訳ないし、このあとが怖くもある。


「お前ら、俺がいることをすっかり忘れてるみたいだから言っとくけど、要は、俺が愛菜ちゃんをオトしても何も問題はないんだよな?」

「なんでそうなるのよ!!」


ちんくしゃ呼ばわりされて大変ご立腹の様子の奈々が、ガブリと噛みつく。


「だってそうだろ。話の内容はよく分かんねーけど、愛菜ちゃんは今、オトコの娘と男の境目が曖昧になってる。てことは、どっちにも転ぶ可能性がある、ってことだ。違うか?」

「違う!! あんたが諦めれば済む話よ!! マコと葉司君はね、そりゃあもう、すごいんだから!!」

「何がすごいんだよ」

「愛!!」

「はっ。愛、ねぇ……」

「ムキーッ!!」


おいおい、奈々さん、落ち着け。

いったん落ち着こう。
 
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