オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
「着てたの!?」と驚いたあと、ものすごく嫌そうな顔をして制服をつまみ上げる葉司に、「そんなふうに持つもんじゃないです!」とぺちっと手を叩き、あたしはキッと睨みつける。

つまみ上げていいものは、無精して洗うのを先延ばしにしていた自分のパンツくらいにしておきなさい!! ……まあ、葉司はマメだから、洗濯物は溜め込まない人なのだけれど。

それはさておき。


「部屋の掃除をしてたら偶然見つけて、思わず着てしまったんだって。でも、それは全然、大きいことじゃないの。お父さん、やっぱり葉司のことが気がかりで上京したんだと思う。古刀市が……とか言ってたけど、そういう理由がなきゃ、葉司に会いに来られなかったんだよ」

「そんなわけっ!!」

「ない、って言いたい? お父さん、ちゃんと葉司のことを分かりたいから、制服だって着てみたんだと思うけどな、あたし」


葉司父の姿を思い出しながら、強気に言う。

悲しいじゃないか、お互いに嫌われていると思い込んで、言いたいことも言い合えず、必要以上に厳しくしてしまったり、最大の味方である親に甘えることを諦めてしまったり……。

だからあたしは、葉司を待っていたのだ。
 
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